北米 A川 (1月)


12月のセミナー後、スコットとの北海道釣行の道中で、A本流に毎年遡上する銀系のスチールヘッドの話で盛り上がった。

全身を銀色のまとったその姿は、どのスチールヘッダーに聞いても最高のコンディション。海から遡上したばかりの魚は、どの魚も栄養を十分取っている為、大きさ、体高をとっても最高のコンディションを保っているというトラウトバムなら誰もが手にしてみたい魚。

カナダに10年、カリフォルニアに4年いた私自身も、ウィンターランスチールヘッドは手にしたことがなく、なんとしても手にしたい、ということで遠征を決めた。

急遽遠征を決めた為、サンフランシスコ経由の旅行券は完売の為、ポートランド経由での旅行券を手配。

 

単独でオレゴンへ向かった。

 

成田から約11時間のフライトでポートランドに到着。そこから5時間の乗り継ぎ待ちで、メドフォードへは約1時間のフライト。

空港へはスコットが迎えにきていてくれて、その足でアウトドア用品店へ1週間分のライセンスを購入しに向かう。

スコットの車内には、相変わらずサンバイザーに吊るされるフライが吊るされている。無論、車内では最近のパターンなどフライの話で盛り上がった。

日本来日の際にもタイイングを行なった、スクイドロのウィンターシーズンカラーがやはり本命とのこと。

 

 

そしてプロムドレスパターンもA全域で絶大な効果がある。

イントルダー系のフライは、タイイング時間も無論掛かるのと同時に、「耐久性」も重要。確かに私自身もオーストリッチなどでもフライをタイイングするが、実際のところ5-6本取ればダメージが目立つのも確か。その点、スクイドロやプロムドレスは断然に耐久性が高い。

 

フライ談義をしながら遅い昼飯の後、スコットの家へと向かう。

スコットの家では奥さんのAlexそしてかわいい二人の子供達が迎えてくれた。

 

日本でのスコットのセミナーの話や、子供達とバスケットボールなんかをしながら、明日からのスチール釣行の前にゆったりとした時間を過ごし、時差もあったので早めの就寝。

 

1日目

 

天候は晴れ。朝4時にドリフトボートを牽引したスコットの車に乗り込み、約2時間のローズバーグへと向かう。途中、コンビニで朝食を済まし、6時半ごろには水辺へ到着。

 

いよいよウィンターランとの出会いを求めての第一日目のスタート。

ここからドリフトボートで最初のポイントへ到着。

大岩が流れとぶつかる場所からスタート。

上流側にキャストし、徐々に流れの強くなる流れを丁寧に探る。

そして、ドラマは開始3流し目で突然起こった。

ズシっと竿まで絞る当たりの後、速度の乗ったラン&ジャンプ

ジャンプしたときの目測で80オーバーは確定のファーストフィッシュ

1本目なので慎重にやり取りをしながら上がってきたのはこの魚だった

34.5inch 87.6cm 16lb 7.2kg

最高に美しいChromeのその魚体にただ呆然。そして80台の魚体とは思えないパワーであった。引き味を他の魚で例えるならば、スチールというよりChinookに近い遡上してきたばかりのパワーあふれるファイトに、一瞬にして魅了された。

さて、皆さんの最も興味のある部分は、「果たしてどのように流してヒットにつながったのか?」かと思う。

ここでは、私がスコットに受けた指示を元に、解説しようと思う。

基本通りアップストリームにキャスト。流れは緩いので十分フライを沈める。流れは岩に当たり内側に変化。ここで一気に加速するのでメンディングはかなり丁寧に行う。雑に行うとフライが浮き上がるのでかなり優しく、且つレンジキープできる幅でのメンドを心得る。ラインスラックは丁寧なリーチで補正。そしてフィーディングポイントへとフライが通過。メンド中もバイトが出るので最善の注意。

このポイントには、合計3本の魚が付いていて、連続ヒットした。

冬の遡上魚は群れで入る。その為、付き場は明白であるが、これはオールシーズンを通して、一級と言えるポイントであった。

 

ポイントへのアプローチは、特にイントルダーのようなヘビーウェイトのフライは、ミスラインを通してしまうと魚に一度フライを見せてしまうことになる。むしろキャスト位置にうまく入らなければ再キャストする気持ちで慎重に攻めることを心かけて欲しい。

 

メンド幅も同様、フライとラインの進化速度を把握し、フィーディングポイントまでの間に、しっかり魚の鼻先にフライをデリバリーできているか?を重点に、しっかりメンディングを入れていくことを心かけて欲しい。またラインスラックを補正するリーチは、フライを浮かせてしまうこともあるので特に丁寧に。スコットはリーチを2流し目以上の時にフライを反転させて誘いを入れるアクションを良く指示します。これはあくまでも活性が低い時に行う動作の為、まずはセオリー通りの攻め方を実施しましょう。

 

このポイントで出てくれた魚達

 その後、反応が薄くなり移動。

水深のあるトロ場に、群れが入っていないかをサーチ。

じっくり沈めて出た1本

 初日は、この他に1本追加したが、アザラシに襲われて体がボロボロの魚だったので、スコットが即リリース。

合計5本をランドして好スタートを切ることが出来た。

2日目

 

今日はスコットからプレゼントされたスカジットマスター2で彼が着ていたというSimmsのガイドジャケットを来て出陣

 

 

天候は全日よりも低下。状況は変わってしまった。

朝一番で昨日のポイントを攻めるがあまり反応はない。

そこで、「早い瀬を攻めてみよう」とスコットが戦略を変えてきた。

この読みが見事的中。昨日のポイントよりも上流の瀬に、群れは徐々に上流に遡上してきた様子

しかし、この瀬では反応が薄く、再度下流域をサーチ。

ここで良型を1本追加

その後、70ほどのものを2本追加して4本。

初日に比べると組み立てがシビアであったが十分な釣果だった。

3日目

 

毎日、型のいい魚との格闘をしていると段々と目が贅沢になってくる。70アップの魚が掛かると「小さいよ」なんていいながら笑いながらスコットと会話しながらランドする始末。腕は2日目にしてパンパンだが、彼はいつも言うことがある。「とにかく上達の秘訣は魚との格闘に慣れること」

フライのパターンも無論大事であるが、彼はとにかくトレーシング、キャスト後の処理を重点に「いかに釣るのか」を大事にする。しっかりキャストでフライをターンさせて、いい流れにフライを乗せること、そしてしっかり魚のいるレンジを流すこと。

彼の使うティップはT14どころかT29を自作して使用している。

つまりしっかり流して、魚の前にフライを通過させることに重点を置くことから、スクイドロのような水圧抵抗の少ないフライやプロムドレスのようなフライが生まれてきたのであろうと考えられる。

そして何よりも、いち早くポイントに入ること。

現場に到着してドリフトボートに乗るまでの用意は5分以内。とにかく一番に川辺に付くことを重視している。

魚にフォーカスすること

「ゲーム」を開始する為に、いち早くフライをレンジに届けること

無駄なフォームのない打ち返しの早いキャストを行うこと

とにかく友人の私への彼の指示はスパルタである。

私自身も彼にそれを望んでいるのは言うまでもないが、以前彼にこんな質問を投げかけたことがある。

「スカジットマスターという領域になる為にはどんなことをすればいいのか?」

彼はそんな質問にシンプルに答えた。

「それなら20年毎日釣りをすることだ」

「そして、何よりも魚を掛けてファイトをすることだ」

年間300日以上、水辺に入る彼は、全米のスチールヘッダーの中でも、もっとも釣行の多いガイドとしてあまりにも有名。

フライをタイイングする時間は釣行前の30分。

シーズンを通して使用できる耐久性のあるフライを巻き、タイイングの時間を減らしても水辺に立つ。

そんな彼を見ていると、なんだか釣り人というよりかマタギやディアハンターの領域に見えてくる。

私達にとって娯楽の釣りも、彼にとっては領域の違うハントである、そしてそれが彼の日常であることが、彼がマスターと呼ばれる由来であろう。スカジットマスターの中でも「実釣はスコット」と呼ばれる意味がなんとなくわかる気がした。

そんな彼と生活を共にしていると、毎晩寝る前に必然にやることができる。

 

朝いち早く用意する為に、着るものから全て用意しておく。

待ち合わせで陽気に話している時間なんか存在しない。まず話すことは「気温下がったな、どこ流す? 昨日はどこが悪かった?」そんな会話。

「ハンティングモード」に入った彼は、私にとっては「大間の鮪漁師」に近い緊迫した緊張感すら漂わせる。

いい引出しを本当に彼からはもらっている、と改めて感謝。

そんな3日目の選択は

「下流域に新しく遡上した魚を探しにいく」

無論、彼の魚の付き場を嗅ぎ分けるハンターの読みは的中。

1発目から良型をランド。

完全にフレッシュな魚。傷もない完璧なボディーを見て「遡上してきたばかりの魚だ」とスコットは言う。

すごい読みだと関心するばかり。

それにしても改めてウィンターランの魚の銀色、そして透明感にうっとりする。

 

それからはとにかく完全なボディーの魚達ばかり。

遡上したばかりの魚達を見るたびに、その魚体の美しさに何度も感動した。

 

 そんな中の1本。この旅初となる居着きのオスをランド。

レッドバンドの出たなんとも懐かしい1本。

最後に1本を追加して終了。

ウィンターランの魚が3本、居着きが1本という釣果であった。

 

その晩は、スコットと共に、近くの日本食を食べにいく。どうやら日本に来て以来随分と日本食が気に入った様子で、本人もテンションが高い。

オーナーは韓国人であったが、味は許せる範囲。

久しぶりの米に自分も大満足。

しかし、寿司のネタ、シャリの大きさにびっくりw

この後、もう一軒いくか?なんて話をしていたが、ふたりとも体力も無くヘトヘトで、私の宿泊するモーテルに戻り、朝までスコットと爆睡してしまった。

4日目

 

朝起きてスマホで水位表をチェック。最悪なことに山に積もった雪が雪解けで水位が上昇している。これで中流域は全滅。

仕方がなく、ギャンブルになるが更に下流に移動することとなった。

ボートを降ろせる場所はなく、道路から川に向かってできた獣道にボートをズリ落とす場所。ふたりでぬかるんだ地面で止まってしまうドリフトボートを、勢い良く押しながら獣道の下までとにかくズリ落とす。

しかし一度船を下ろせばパラダイス。誰も先行者がいない場所

 

 この場所は、嘗てスキナーに14年、カムチャッカ、アラスカと世界のスチールを追い回してきたスコットが、人生最後ならここを選ぶといった場所。

なんでもエンジンのないドリフトボートを若いころ降ろして、仲間とオールで漕いで上がっては釣り下り、多くの40インチオーバーを釣った場所という。

多少水位が高いが、出ればデカイ。バクチを打つ作戦だ。

強い水流の為、エンジンでもなかなか上がっていかない。

そんな流れの中で、必ず魚が付くというランを丁寧に探り出す。

すると幸先のいい反応。そして上がってきたのがこの魚

 

 完全に遡上してきたばかりの魚体。

しかし、ここで私は、なんだかリーリング中に、ロッドに違和感を覚えた。

なんだか音が変で軋むような泣き方をした。

そしてリーリング中も、妙な引っかかり。

この旅では、タックルを全てスコットのものを使用している為、原因がすぐにはわからなかったが、どうも様子がおかしい。

スコットに伝えると「連続の釣行で疲れてきてるんじゃないか?」なんて笑いながら話す。私も幸先のいいスタートに「もう一本釣ればわかるかな」という余裕ぶり。

この余裕が後に、最悪な結末を呼び起こした。

次のラン。スコットが必ず40インチオーバーが付くという強い流れの大岩のかた。綺麗にメンドも決まり、最高のラインを流す。「来るぞ!絶対来るぞ!」とスコットの宣言通り、ここだ!という場所で繊細な当たり!同時にフックオン!

一気にバッキングまで走りジャンプ一発!

明らかにいままで釣ったサイズと違う。

スコットも必死に指示を出す。

ロッドのベンドを緩めないようにしっかり決めたその瞬間。

あの嫌な音が。。。

それと同時に、ランニングラインからブレイク?

一瞬のことだった。

ふたりして頭を抱える。

ここまで私も、1本もバラシていなかったのでスコットから喝が入る

「何やってるんだ!あれは確実に40インチオーバーだぞ!」

わかっている。だが絶対に変な切れ方だ。

少し冷静に切れたランニングラインを見てみると鋭利な刃物で切ったような切れ口。

待てよ?おかしいだろ?とガイドを全て確認すると。。。

スネークガイドの1本がキザキザ。。。

「スコット、これじゃ無理だ」

スコットはまだ興奮しながら「もう一度だ!もう一度流すぞ!」と再度ラインを修正。

いやいやこれじゃ無理だぞ!という私も懲りずに流してしまう。

そしてまたヒット!今度の魚は80オーバーは確定だが、またキリキリ音が。。。。

切れないようにラインを送り込みガイドをふたりで眺める

完全に当たっている。。。と同時にふたりの目の前で切れるのを目視

「スコット、だから言っただろw」

彼も苦笑いしながら「お前に40インチオーバーを出させたくて興奮したwこれじゃ今日は無理だなw」と少し早い納竿。

最終日の明日にかけることとした。

5日目

 

遠征の時はいつも同じだが、毎日魚のことだけを考えて、夕食を食べながら寝てしまいそうなほど体力を消耗し、魚を追ってきたこの生活も、今日が最後。

これを300日続けるスコットの体力とメンタルに改めて脱帽。

大型魚とのファイトをスイッチロッドで続けてきた腕はもはや限界だが、そんなことはどうでもよかった。

日課になる朝風呂で腕をマッサージしながら、準備してスコットよりも早く駐車場に待機する。

十分な釣果だが、どうしても40インチのクロームが獲りたい。人間の欲は無限だ。クロームが見れたらいい、と言っていた自分が、最後にはサイズアップを望み出す。

「私の仲間もみんなそんなもんだ」と笑いながら、昨日の戦場へと戻る。

ガイドが大丈夫な8番のスイッチロッドを再度セットアップ。

水位は昨日より更に上昇。スコットはここに来てはじめて「今日は全域が良くないと思う」とはじめて弱気な発言をした。

「いや朝のうちはまだ絶対魚が残っているはずだ」と何故か最終日にして強気な自分。

「ファーストランに掛けよう。絶対出るよ」

今思えば願望でしかない発言だったが、なんだかこの朝はそんな気がした。

そんな気にさせてくれるほど昨日の場所は反応が濃かった。

どうしても魚が遡上する前に数本、いや1本でもかけたい。

そして昨日好調だったランを流す。

しかし、反応がない。

もうひと流ししたその時

あのスーパーランがまたもや展開。

反応は薄いがまだ残っていた!

 

 

そして立て続けにもう1本。だがサイズがかなり小さい。

当たりのペースは昨日ほどではないが、私の集中力はここに来て最高潮。そして本数すら数えないほど、大型を望む自分がいた。

ハイペースにとにかくランドを繰り返す

 

気付けば、70オーバーは写真すら獲らずにリリースしている自分がいた。なんとも贅沢な状況で、午前中だけで最多の6本をランド。幸先のいいスタートに「これなら午後も行けるな」と早い時点でスコットがハンバーガーを作り出す。

 

このスコットの作るハンバーガー。とにかく何故アメリカのハンバーガーはこんなにうまいんだというほど絶品。

毎日食べていたが、これが飽きないのだ。

早めに、食事を済ませ、午後の部へ。

しかし、ここに来て全く反応が消える。

完全に魚が移動してしまった。

とりあえず上流に上がったことを予想し、丁寧に長いランを流すが、全くの無反応。

時間だけが過ぎていく。

もうあのスーパーランはこのまま終わるのか、もっとしっかり味わっておけば良かったなんて妄想ばかりが脳裏を過ぎる。

気付けばあたりは薄暗くなっていた。

「アツ、ここがラストランだ」

スコットは帰り支度をはじめた。

これがラストか。でもいい釣行だった。もう少し釣ってたいな。なんてことを思いながら、少しでもドリフトの時間を稼ぎたくて、リーチをこれでもかと丁寧に流す。

そしてA川の女神は最後に今日一番のハードランを僕にプレゼントしてくれた。

 

掛かった瞬間に40インチアンダーということはわかったが、この遠征を振り返りながら丁寧にランディング。

完全にクローム化したフレッシュなその魚体に、なんだか愛おしさと感謝の気持ちが込み上げて来た。

 

33inch 83cm 15lb 6.75kg

 

こうして5日間の釣行で、クローム化したスチールを気付けば20本。居着きを1本と十分な釣行に幕を閉じた。

この釣行を通じて再確認できたことは、技術は繰り返しによって身につくもので、道具やフライなんかよりも、いかに多くのポイントを最短に叩いていき、付き場を理解して魚の前にフライを通すことができるのか、そんなことを考え続けた5日間だった。

キャスティングもシンプルで、フライにもデリバリー速度と耐久性を加味したスコットのスタイルは、ウィンターランの魚を釣ったことがない私すらスチールヘッダーの領域を超え、スチールヘッドマシーンへと変えてくれた。

彼はここに加えて帰り道の車内で私に語った。

「いろんな釣りを学べ。そしてより多くの戦術を身につけろ。そして何よりも釣り続けて見ろ。」

引出しの量を規制することはない。スタイルも多用に身につけることが自己のレベルを引き上げる。

この遠征を今年の北海道に役立てよう。

昨シーズンに比べて、どんな新しい工夫を模索していくのか

これだから釣り人の妄想は眠らない。

このクロームスチールを育むA川の大自然

そしてトラウトバムである自分を支えてくれる家族

いつも引出しを開いてくれる多くの仲間達

そしてこの旅の案内人、我が氏、スコットに

感謝

またいつかこの水辺で40インチアップとの出会いを夢見て

 

To be continue …..


Posted under: Field Report